これまで乗っていた26フィートヨットも、今回のヨットもどちらもティラー仕様であるが、今回のヨットでは違和感がある。機走するとティラーに少し振動を感じるが、これはどうも正常らしい。またこれは帆走時には感じないので、確かにスクリューからの水流乱れによるものであろう。ただ帆走時にも違和感のあるガタが感じられた。何人かに聞いた推定結論はブッシュの摩耗によるクリアランス拡大。これは自分では直せない。
業者へ依頼
同型艇に乗っている方に聞いてみると、ブッシュ交換したことがあるとのこと。またその時の業者も教えて頂いた。どうせなら経験のある業者にお願いしたい。ということで名古屋のH社に電話した。H社の方と会話すると、「このヨットはツボイのヨットで、昔はツボイとの取引もあった。ヨットの製造番号などがわかると図面や製造時のデータと照らし合わせることができる。」との心強いお言葉。H社にお願いすることとした。私は急いでいる訳ではなかったし、H社も忙しいようで、着手までには1か月程度かかったが、2月の後半に実施することに決定。5日程度の上架で分解→原因確認→部品製作→組付け完成まで実施する計画とのこと。ヨット購入後初めての上架となるので、この機会を利用してやりたいこともあった。主には、購入時にチェックしていなかった船底チェック、船底塗装、船名ステッカー貼替(別途記載)である。購入時には船底は写真を見ただけで上架してのチェックはしなかったが、実際に確認しても問題無かった。船底塗装は昨年10月に実施して頂いていたので必ずしも必要なかったが、折角なので1回塗りを実施。上架予定に合わせて、事前にステッカーや船底塗料の手配は事前に済ませておいた。
上架&ラダー状態チェック
これまで約6年もティラー仕様のヨットに乗っていながら、どのような構造でラダーが下に落ちないようになっているのか、恥ずかしながら正確に把握していなかった。ヨットによって若干の違いはあるだろうが、基本シンプルな構造であり、そう大きくは違わないのだろう。今回初めてラダーを抜き、その構造を確認できる機会なので興味津々であった。上架してまず判ったのは、ラダー軸を支えている下部のブッシュが少し下方向にずれてハルから下に若干飛び出していること。またそれによってブッシュとハルの間の隙間が発生し、ラダーを回転させると軸がブレる動きをしていたことである。ブッシュの摩耗だけという想定とは若干異なったが、ブッシュが悪いことには変わりない。次は分解である。まずラダーが勝手に落ちないようにロープで固定し(下写真)、上部のティラーと金属部品を外し、ラダーを下へ抜く。尚、写真でラダーだけ綺麗になっているのは、触る部分が汚れていると作業しにくいので、事前にブラシと水で汚れを落としてあるためである。

こんなに重いのか!という抜いたラダーが下記写真。初めて構造を理解することができた。

上記写真には写っていないラダー軸上部の写真が下記。ラダーを抜く前の状態であるが。

構造を模式図にすると下記となる。

簡単に説明すると、ラダーが落ちない構造は以下の通りだ。ラダー軸最上部には円環状の切り欠き(上の写真で見える)があってこの軸に被せた金属部品の外側からイモネジで固定されている。金属部品のラダー軸が通る部分は完全な丸穴ではなく、一部に縦方向の切れ目があり、その切れ目をネジで締め付ける(切れ目を狭くする)ことでラダー軸との隙間を締め付けるようになっている。この部分はラダーを分解しなくても見ることができる。実際にはイモネジの力よりも締め付けによる摩擦力によって、金属部品とラダーシャフトは固定されていると思う。ブッシュは上下にあって、上部ブッシュは置いてあるだけ。下部ブッシュは船内から横方向の2か所のビスで固定されていた。今回はビスが当たる部分の下部ブッシュが何らかの原因で欠けて、ブッシュが下に下がり、正しくない位置で長期に渡って使用されたことでハル-ブッシュ間、及びブッシュ-ラダー軸間のクリアランスが広がり、ラダー軸が少し暴れて違和感があったことがわかった。取り外したブッシュ現物は下記。

修理と作動確認
修理はブッシュを新たに製作して組付けるということになる。ある程度の原因を想定して、H社が事前にブッシュ材料を手配してくれていたので、採寸してブッシュ製作は早かった。予定通りの日程でブッシュを組付け、ビス止めして修理完了。作動させた感覚は、音も静かになり、驚くほど軽くラダーが回るようになっていた。当然ガタも感じない。H社のIさん、Aさんありがとうございました。上架タイミングは2月後半の今年最強寒波と重なり、小雨や小雪がちらつく中での作業もあったが、同時に進めた船底塗装、船名ステッカー貼替、ハル磨きも終わり、すっきりした。

