ウインドラスとスプライス

ヨット

ヨット買い替えの下見に行ったときに、前オーナーから、「ウインドラスは動かない前提でいて下さい。」と言われた。前オーナー曰く、「ウインドラスはほとんど使ったことがない、動くかどうかわからないし、今動くか確認して変なことになってもいやなので、動かない前提で考えてほしい。」とのこと。だったので、動かない前提で購入を考えた。その時の写真が下記。確かに使っていた形跡はないし、アンカーロッカー内を見たら、チェーンはウインドラス直下で錆びて切れていた。またウインドラスのフットスイッチもゴムカバーが破れていた。

作動確認

回航前に想定外のことになってもいやなので、愛知に回航するまではタッチせず。回航後暫く経ってから、まずはウインドラスそのものの作動確認(スイッチの機能確認を含む)をすることとした。船内の元スイッチを入れ、フットスイッチを恐る恐る手の指で押してみると、なんと”ガーー”という作動音と共に少し動いた。反転側もOK。ラッキー!ウインドラスもスイッチも生きている。事前に覚悟して、ウインドラスの価格調査もしていたが、40万円くらいかかりそうだった。本当にラッキーでまずは一安心。しかし次にやることがある。

チェーンとロープ

次に考えないといけないのは、チェーンとロープをどうするかである。もともとチェーンは5m程度の長さのものが付いていて、ロープの長さは計ってないが恐らく数十メートル。なのでロープはできれば最初はそのまま使いたい。ラッキーなことに、リアアンカー用?に3m~4.5m程度のチェーンが数本、スターンロッカーに入っていたので、少し短めかもしれないがその中で最長の4.5mのものをなんとか使いたいと考えた。これらを使うためには、チェーンにロープをスプライスして接続する必要がある。しかもウインドラスを通る程度の上手な?スプライスが必要である。聞くところによると、新品のロープは柔らかいのでスプライスもしやすいが、中古ロープは固くなっていてスプライスも難しいとのこと。また私はスプライスなどやったことがない。が、新品を購入しようとするとウインドラスに合うものを選択する必要があり、結構高価(100mロープ+5mチェーンで約10万円)であること、スプライスはできるようになっておいても損は無いと思ったこと、などいろいろ考えて、スプライスにチャレンジすることとした。

スプライスにチャレンジ

事前準備

前オーナーがいろいろなものを船内に残してくれていて、いろいろチェックしているときに、「これってスプライスの道具かな?」と思ったものがあったので再確認してみた。結構大きいがネットで調べてみるとスプライスのための「スパイキ」という工具らしい(下記写真)。

次はスプライスの方法をいろいろ調べた。今は本当に便利な時代で、ネットで少し調べれば本当に沢山の情報が見つかる。最初はいろいろな方のブログなども調べたが、最終的に一番参考になったのはユーチューブであった。自分で実施するときに確認しながら実施するには、再生したり停止したりする必要がない静止画情報の方が便利かなと最初は思っていたが、実際にやり始めてみると、再生&停止&巻き戻しの繰り返しであっても、やはり情報量に勝る動画の方がよく分かった。またロープの種類(編み方)によってもスプライスの方法は異なるらしい。まずは最も簡単そうな3打ちロープで練習してみることとした。

3打ちロープで練習

練習とはいっても、これをそのままもやいとして使う前提である。ヨットと一緒に持ってきた中古の3打ちロープ(もやいとして使われていた?)を既に塩抜きしていたのと、このロープの端部がバラバラになりかけていたので、これで挑戦。塩抜きしていたので少しは柔らかくなっていたが、それでも多分新品よりは固い。動画を見ながら、まずは輪の大きさを決め、手順に従って開始。スパイキのおかげでなんとか作業は進むものの、ロープの間にロープを入れていくのが本当に硬くて大変な作業。疲れたし時間もかかったが、なんとか仕上げた最初のDIYスプライス製品が下記。よく見る写真とは違っていびつな下手糞なスプライスだが、なんとか機能しそうではある。ただ、クリートに掛ける作業を少し間違って想定しており、クリート全長がそのまま入る大きな輪で作ってしまった。結局この作品は現在もやいとしては使っていないが、スプライスとはこんなものか!ということを体験できた最初の作品となった。

本命のクロスロープでのスプライス

私が持っているアンカーロープはクロスロープ(8打ちロープ、エイトロープとも言うらしい)である。3打ちロープより複雑な編み方だし、またチェーンを絡めて最小の輪で編まないといけない。スマートに出来上がらなければウインドラスを通らないのである。がどの程度スマートならウインドラスを通るのかもよくわからないので、最善を尽くしてやってみるしかない。もともとの状態(チェーンとのスプライス部)は下の写真の通り。なんと美しい! このロープをスプライス部末端辺りで切断し、これを別のチェーン端部に通してスプライスする必要がある。果たしてできるのか大きな心配はあったが、まずはクロスロープスプライスの情報をネットで探して勉強し、作業開始することとした。

クロスロープの場合は、3打ちロープより少しややこしいが、丁寧に説明してくれている動画もたくさんあるので、それに従えばどうすればいいかはわかる。切断したロープ先端をチェーン端部の輪に通し、練習時のようなロープ側の輪ができないようにスパイキを使って作業開始した。やってみてわかるが、4.5mのチェーンが非常に邪魔になる。私がまだ慣れてなく下手糞なだけかもしれないが、スプライスはロープを裏返したりいろいろ動かしながらの作業になるので、チェーンをジャラジャラ動かしながらの作業。またロープが固い。新品ロープならもっと柔らかいのだろう。スパイキを使ってもなかなかロープを通すことができず、また無理するとロープを傷つけそうで、2か所程度ロープを通して諦めた。このスパイキではダメだ。スパイキという道具を調べていたときに、別の道具も初めて知ったのだが、もう一度調べてみることとした。すると、セルマー/フィッドセットやサムソン/スプライスキットなどどいうものがある。こちらの方が作業効率は高そうだ(価格も高いが)。いろいろ考えて、セルマー/フィッドセットを購入することとした。これが届くまでスプライスは一旦中断。

数日後、届いたものが上記。どの太さのものが作業にフィットするかわからなかったので、セットで購入した。早速使ってみた。これでもロープが古いためかそれなりの力が必要で、手先は疲れるが、なんとか作業は進む。繰り返し作業になるが、少しずつ作業を進め、最後は余ったロープを切断後、ライターで炙って押し付けた。出来上がったものが下記写真(この時点での撮影出来てなかったのでウインドラスにセット後の写真)。3打ちロープでの練習時よりも難しかったが、新しいツールを使ったおかげか出来栄えは前回より若干ましなような気がする。上の写真のもともとのスプライスと比べると全く下手糞であるが。問題はこれでウインドラスを通過できるかどうかである。

作動テスト

完成品をウインドラスにセットした。ただセットしようとして気付いたが、セットするのに結構苦労した。チェーン先端を下(アンカーロッカー側)から上に通すには、ロッカー内に入らないと難しそうだが入れない。なので、数十メートルのロープをウインドラス上側から順にロッカー内へ通していった。単純作業なので根気よくやればできるのだが時間はかかる。ロープをセット後、チェーンの端部をアンカーに固定して準備完了。この状態でウインドラスにかかっているのはチェーン部である。ここからウインドラスを作動させてアンカーを下ろしていく。スイッチを押すと、ウインドラスがガーーを鳴りながら回り、、、、やったー! スプライス部が無事ウインドラスを通過して出てきた。もう少しウインドラスを作動させ、アンカーが海中に入る辺りまで回した。次に引き上げ。が、ここで想定外の問題が発生した。なんとロープが滑って巻き上がらない。ロープそのものはもともとヨット建造時にセットされたものなのでウインドラスに適合しているはず。ということは古くなって固くなって滑るようになったのか?ここまで苦労して作業してきて、先ほどは歓喜の瞬間であったのに、一気に疲れが出て途方に暮れた。さあどうするか?やはり新しいロープを買わないといけないのか?でもこれまで従来のヨット時代の練習の1回を除いてアンカリングをしたことがなく、まずは費用をかけずに今のセットでアンカリングの勉強と、本当にどういうセット(ロープ長等)が必要かを学びたいと思っていたので、なんとかこれを使いたい。この日は、とりあえず人力でアンカーを引き上げ、負荷を下げてウインドラスでロープとチェーンをロッカー内に収納して(軽負荷だと引き込むことができる)、終了とした。

いろいろ調べてみたが、こういう場合の対策が見つけられなかった。ウインドラスを再度よく見てみると、ロープ巻き込み口の上に細長いカバーのようなものが付いている。下写真の最上部のグレーの部品である。

ウインドラスの説明書を見たが、この部品の機能は書いてなかった。でもこれを下方向に押し付ければロープに摩擦力が発生して巻き上げができるのではないか?この部品の正しい使い方かどうかはわからなかったが、この部品の形状や構造からして、そういう機能を持っているように感じ、やってみることとした。前回同様、アンカーが海中に入る程度まで出して、その後グレー部品を軽く足で踏みつけて巻き上げ開始。すると、なんと、ロープが巻き上がり始め、そのままスプライス部も通過し、チェーンにかかり、アンカーを最後まで巻き上げることができた。ホッとした。良かった。後日ウインドラス内部の注油などメンテナンスも必要かと思い、まず最初にカバー(上記写真のQuickと文字のある部品)のみ外してみたが、内部にはグリスがしっかりと残っていたので、これ以上ばらして調子が悪くなっても困ると思い、それ以上の分解メンテナンスはしないこととした。本当の海上でのアンカリングテストはもう少し先になると思うが、楽しみである。

後日追記:アンカーロープの長さを実測。上架時にロープを地上に船体に沿って折り返して置き、約10mの船長さ基準で見積もるいう曖昧な測り方であるが、約45mであった。

タイトルとURLをコピーしました