私のヨットはカッターリグ仕様であり、フォアステーが2本ある。その内、内側のインナーフォアステーのテンションが緩い気がしていた。正しくテンション測定したわけではないが、インナージブセールを使った時の感覚や手で引っ張った時の感覚である。他と比べて何となく弱かったので、少しテンションUPしようとしたが、ファーラーが付いていて、テンション調整部分はファーラーの中に隠れており、簡単に作業できない。これまで乗っていた26フィートヨットはハンクス仕様だったので、そもそもファーラーの構造もあまりよく知らず、まずはファーラー構造を勉強するところから開始であった。幸いにも前オーナーがファーラーの取説を残してくれていた。
最初にやったこと
前オーナーに確認したところ、新艇建造以来約18年、ステー類は交換していないとのこと。ワイヤが伸びることでステーのテンションが緩むことはあるのだろうが、インナーフォアステーだけ他より少し緩い気がするのが異常なのか通常あり得る範囲内なのかは、私にはよくわからない。でもここだけ少しテンションUPしたい状態ではあった。ジブファーラーを使っている人には当たり前のことかもしれないが、テンションUPしようとしてまず困ったのは、ターンバックルの上部が完全にファーラー内部に隠れていて、ターンバックル上部のワイヤ部を掴むことが全くできないことであった。ファーラーを20cm程度上に持ち上げないといけないが、どうすればどの部分が持ち上がるのかわからない。取説の絵を見ると、ファーラー全体の下部側は、下写真の黄色い部品の左右に付いている黒い樹脂ネジを外せばよいように見えたので、早速やってみた。黒い樹脂ネジは比較的簡単に外すことができたが、ファーラー全体を上に押し上げても上がりそうな気配が全くなかった(最終的には上がったのだが、、、)。取説見るだけでは上がりそうにも思えたが、本来動くはずの部分が固着しているだけなのか、ファーラー上部にこれ以上上がらないようになっているストッパがあるのか、上まで上がって確認すればわかると思ったが、マスト登るのは大変なので、その前に何か他にできることはないか考えた。

次にやったこと
取説と実物をよくよく見れば、セールとセールの軸になっているパイプ部(下写真の巻かれたセールの下部に少しだけ見えている細いアルミパイプ部)はそのままでも、下写真の太いアルミパイプ部に設置されている2個のネジを外せば、細いアルミパイプと太いアルミパイプ間でスライドして、太いアルミパイプより下部全体を上方向に持ち上げることができるのではないかと考えた。そこでネジを外すこととした。上側のネジは比較的容易に外れたのだが、下側のイモネジが全く回らない。アルミとSUSのネジが電蝕(正確には異種金属接触腐食というらしい)しているようである。頑張って回していると、内六角部を舐めてしまった。こうなったらネジをドリルで破壊するしかないと考え、ネジ内径より少し小さいドリルでイモネジを取り去った。さあこれでファーラー下部を持ち上げることができると考え、ファーラー下部を押し上げたが、本来スライドするはず(と思う)の部分が固着しているのか、なかなかスライドしない。何度か少し衝撃を与えながら作業していると、ついに動いたのだが、結局スライドしてほしい部分は固着したままで、セールも含めたファーラー全体が持ち上がった。「なんだ、これならネジ壊す必要なかったじゃないか!」と思ったが、テンション調整はできそうである。ファーラーを持ち上げ、その位置でロープでバウパルピットに固定し、テンションUPの作業を実施することができた。但し、ファーラー上部で細パイプ部の蓋をしているような部品が、ファーラー持ち上げた時には上に上がったが、ファーラー下ろしても下がってきてないので、20cmほどの隙間が開いており、蓋の機能を果たしていないと思われる。少し気になるが、覚えていれば(いつになるかわからないが、)マストに上った時に確認しようと思う。

タップ加工
当初の目的は達成することができたが、無駄な作業を増やしてしまった。壊したイモネジ対応である。このままでも太いパイプと細いパイプは固着しているし、1個の固定用ネジは機能しているので、そのままでも良かったかもしれないが、やはり心配なので、放置することはやめた。最初は元々のネジ穴電蝕部を、もとのメネジに倣って再生できないかと考え、タップ加工を実施。が結局うまく再生できず、ネジ切ってしまったので、少し下に新たにメネジを追加することとした。ただし、太いアルミパイプと細いアルミパイプを分解せずに実施するので、細いアルミパイプまで貫通しないように、微妙な加工となる。太いパイプのみに加工できるように加工深さに注意しながらまずはドリルで下穴を開けたが、細パイプまで到達し、ドリル先端部分は僅かに細パイプも貫通したように見えた。でもイモネジ締め付け時に、あまり強くしなければイモネジが細パイプを貫通することはないだろうと考え、続行。タップ加工を行い、別途購入したSUSイモネジを取り付け。下写真のように1個余分な穴が開いたままだが、これで大丈夫だろう。と納得することとした。

新艇建造から約18年ステーを交換していないので、これから20年乗ると考えると、そろそろステーを新品に交換しておいた方がいいと思っている。しかし今回初めて知ったが、フォアステー交換時に、古いファーラーをそのまま使ってくれる業者は知る限りではいないとのこと。とするとファーラーも交換になる。この余分な穴あきファーラーとの付き合いもそう長くはないかもしれない。