2代目ヨット探し
6年半ほど楽しんできたヤマハ26Cにも乗り慣れ、いずれはもう少し大きい新しい(といっても中古の)ヨットが欲しいと思っていた。次の2代目のヨットは資金面から考えて人生最後のヨットになる。大きすぎて60歳代以降の体力で取り扱えなくてもだめだが、できれば夢想ではあるが世界に出ていくという夢も持てるヨットがいい。どんなヨットがいいか?基本要件を箇条書きにしてみると、
- サイズはシングルハンドでもなんとかなりそうな33~36フィート前後
- 外洋での耐候性があること(でもロングキールは、取り扱い性とボートスピードで除外)
- 天候変化時の対応が楽そうな(と思う)カッターリグ
- メインセールは構造シンプルな引き上げ方式(ファーラーはNG)
- 船齢20年程度以下
ここ数年、いろいろな情報を見ていろいろ考えてきた。高緯度地域に行ったり、漂流物との衝突リスクを考えたり、浅瀬に行くことなども考え、リフティングキールのアルミハルが欲しいと思っていた期間も長かった。ALUBAT OVNI 370や、Bestevaer36が新規に発売されたときには非常に興味があったし、カタログ取り寄せなどもしたが、非常に高価。アルミハルの中古艇は、日本ではほぼ存在しないし、世界の中古をWEBでよく見ていたが、中古でも高価だし、海外で中古艇を買うことのハードルも高い。またシングルでもなんとかなりそうな35フィート前後より小さいアルミ艇はそもそも数が少ない。アルミがだめならFRPのリフティングキール艇として、Southerlyに興味を持っていた時もあった。上記箇条書き要件に一致しないかもしれないが、カタマランを候補にしていた時期もあった。一人でカタマランで外洋に出て行っている人の記事も見た。でも、いろいろな情報を見て、比較的小さいカタマランは安定性に欠ける気がしたのと、やはり購入&維持の価格がネック。現実的なヨットは、箇条書きの条件を満たすオーソドックスなFRPクルージング艇か?例えば、Hallberg-Rassy、Najad、岡崎造船など。Hallberg-RassyやNajadは、海外のサイトを見ると中古艇の数も多いが、日本ではほとんど見かけない。岡崎のヨットも数は少ない。そんなこんなと考えて数年、どちらかというと日本より海外のサイトをよく見ていたが、数か月に1回しか見ない日本のサイトをふと見たときに、見たその日にUPされたところのツボイオーシャンブルー990(林賢之輔設計)を見つけた。運命的なものを感じ、夢中になって30分ほど情報や写真を見入ったあとに早速「見学希望」のメールを発信。何度かのやりとりで見学日を決定した。
実は、ツボイオーシャンブルー990(以下、OB990と記載)も気になっていたヨットの1つ。欲しいヨットの範囲内では少し小さめであることと、何より、生産台数が11艇しかないことより、めったに出回らないヨットである。興味を持ったのは、ヤマハ26Cを係留しているマリーナに3艇在り、そのうち1艇のオーナーからはOB990の良さをよく聞いていたから。手放すなら売って欲しいとも言っていたのだが。。。。そんな中、OB990でかつ全生産台数11艇中の2艇しかないカッターリグが売りに出されたのを偶然にも見つけたのであった。
見学から購入へ
私の住んでいる愛知から、ヨットが係留されている千葉までは、コスパ、タイパに優れる夜行バス(愛知-東京往復)を含めたバス乗り継ぎで移動し、午前10時頃に目的地到着。天気も良く、早速ヨットを見せて頂いた。30分程度であったか、セーリングにも快く応じて頂いた。船齢18年、1オーナー、これまで丁寧に乗ってこられ良く整備されたヨットであった。前オーナーは主にシングルで楽しまれていて、事前の写真でも確認していたが、バウバースが最初から備品置き場としての棚、及び折り畳み式シングルベッドとなっているのも気に入った。高い買い物ではあるが、半日でヨット全ての確認は到底不可能。細部は潜り込まないと見ることができないし、船底は陸揚げしないと確認できない。しかし、前オーナーと会話し、非常に信頼できる方だと思えたこともあり、その場で回答はしなかったものの、私の中では購入をほぼ決意して帰途についた。帰宅後は妻の了解も得て、1,2日後には購入の意志を伝えた。
回航
購入の手続きは粛々と進めるものの、1つの課題として、12月という冬場にどうやって千葉から愛知まで持ってくるか?ということがあった。検討に挙がった選択肢としては、陸送か回航。しかし、このサイズのヨットとなると、陸送は現実的ではなく、回航が良いというのが専門家の意見であったので、回航に決定。次はだれにお願いできるか?夏場であれば、同乗して手伝ってもらえる仲間もいるが、冬場はなかなかそうはいかない。また遠州灘を西方向へ冬場に移動しなければならないという難所もある。が、春までも待てないので、プロにお願いすることに決め、お願いできる回航業者を探し始めた。同じマリーナの仲間や、船関係のプロ、そしてWEB(リップルタウンの「小型船舶の回航一括見積」)も使って情報収集し、最終的におよその日程を合意の上でF社にお願いした。そして私も勉強のために同乗することとした。但し、日程は天候に大きく左右されるので、日程最終調整前は天気予報を見ながら高頻度でやり取りをした。
出航前日には前オーナー、回航業者、私が千葉のマリーナに集合し、ヨットの引き渡しと船の状態共有、燃料補給等の出航準備。移動時間は日の出後に出発し、日の入り前に停泊地到着、オーバーナイトはしない。冬場は日も短いので、行動時間も短くなり、日数もかかるが、これは冬場に回航すると決めた以上仕方がない。結果的には当初の計画を若干変更することとなったが、下記日程(地名はその日の到着地)で回航できた。尚、宿泊はすべて船泊。
1日目:千葉 大原漁港
2日目:千葉 千倉漁港
3日目:伊豆大島 元町港
4日目:静岡 下田港
5日目:天候不良のため下田に滞在
6日目:静岡 御前崎港
7日目:愛知 伊良湖港
8日目:愛知 Myマリーナ
1日目:to 千葉 大原漁港
6:45に出航し、13:00に到着。時間に余裕があったが、もう一つ先まで行くには時間が足りない。ほぼ機走であったが、順調。漁港への着岸は私は初めての経験。まずどこに着けていいかわからないし、クリート?の形状もマリーナの浮桟橋とは異なり、様々。私には暫くは出来そうにないが、さすがプロのUさんの手際のよい着岸を見せて頂き大いに勉強になった。

2日目:to 千葉 千倉漁港
7:00に出航し、14:00に到着。この日もほぼ順調。しかし、まだ千葉県内。先は長い。また夜半から風が強まり、翌朝苦労することに。
3日目:to 伊豆大島 元町港
千倉漁港からの出航で苦労。船を岸壁に押し付ける風が強く、また船の前後に停泊している船との距離に余裕もなく、離岸に苦労。30分程度悪戦苦闘したのち、一瞬風が弱まったタイミングでなんとか離岸。バックで離岸の瞬間は操船していたプロの方はどうだったかは聞かなかったが、私はバウスプリットを岸壁にぶつけないかホントに冷や冷やであった。
今日は、房総半島の先端を回ると、千葉を抜け出し、東京(伊豆大島)まで行ける。全く事前には想像していなかったが、房総先端あたりで、突然富士山が現れ非常に感動。良い気象条件であれば、時々愛知三河湾からも見ることができる富士山が房総沖から見えた(下写真)ことで、少し愛知に近づいた気がした。

房総先端から大島元町へは、大島の北側を通過。本船は少なく良かったが、潮のぶつかりと逆潮で変な波が立って(下写真)頭から塩水を浴びたり、船の速度が低下したものの、元町にはほぼ予定通り到着。黒潮のおかげか少し暖かい気がした。夕刻の元町からも富士山がきれいに見え、ほぼ一日富士山が見える日であった。元町の近くには温泉があり(徒歩圏内)、出航以来の久しぶりの風呂に入ることができた。

4日目:to 静岡 下田港
この日は最も楽な一日であった。出航及び到着時間の記録を忘れていたが、間違いなく、最短時間、最短距離。黒潮による若干の逆潮はあったものの風も穏やかで昼前には下田に到着し、下田ポートサービス(有料)に係留。下田に来るのは私は初めてであったが、ここは日本最初の開港地であり、ペリー提督が上陸した場所とのことで、記念碑が立っていた。

係留後は、業者に運んでもらって給油後、昼食へ。この日は訳あって、昼も夜も徒歩圏内の「黒船屋」にて食事。夕食前には、折角なので、電車で一駅のところにある金谷旅館の千人風呂へ。風情のある良い温泉であった。贅沢な一日であった。

5日目:天候不良で移動無し
前日までは、御前崎まで行く予定であったが、朝方の風予報を見て、本日は待機することとなった。今回お世話になっている回航プロのUさんの友人にこの日はお世話になった。車で迎えに来て頂き、昼食、石廊崎観光、、、、と一日お世話になった。石廊崎から見た、もし出航していたら通過していた沖合は、すごい西風と白波で、「やめてよかった!!」と思う海況が広がっていた。

6日目:to 静岡 御前崎港
穏やかな朝を迎え、6:40に下田を出航し、15:50に御前崎港到着。これまでで一番長い移動であった。なかなか見えてこない御前崎に近づくにつれて西風も強くなり、体感気温も低下。しかし、回航プロのUさんは凄い。御前崎港の奥の奥の狭く入り込んだところまで進み、非常に穏やかな岸壁に係留。伊豆半島を超えると、さらに愛知に近づいて来た気がした。明日は遠州灘を超え、目的地は伊良湖。今日よりもさらに長い最長の日となるが、到着すればもう愛知である。
7日目:to 愛知 伊良湖港
今日は最長距離の移動。まだ周りは暗い6:10に出航。遠州灘は長い。陸よりのルートを取ったので、黒潮の影響はなかったが、前方(西)からの波と風で苦労の一日であった。セールは出したりしまったりであり、基本はエンジン。真正面からの波をさけるため、ジグザク進行であったが、沖合に出ると波が大きくなるため、できるだけ岸よりを航行。午後からは風も弱まり、渥美半島に取りつくあたりからは、ほぼ無風。しかし伊良湖に近づくころには夕日も落ち、辺りは暗闇となり緊張が高まる。「ほんとに暗闇と強風&波が重ならなくて良かった!」と思った。夏のオーバーナイトは知り合いのヨット回航時に2回ほど経験があるが、冬のオーバーナイトはやるものではない、と強く感じた。最大の難関である遠州灘を超え、伊良湖港には19:00到着。この日は風呂無し&船内夕食のつもりでいたが、近くの龍宮之宿で、風呂も食事も頂けるとわかったので、早速龍宮之宿へ。想定外に良心的な食事(価格も味も)と風呂を頂き、すっきりした気分で眠りについた。千葉を出発して一週間、やっと愛知に到着。明日は見慣れた三河湾。
8日目:to Myマリーナ
夜半から風が強まり、朝起きると、近くの岸壁では数メートルの高さの波しぶきが上がっている。出航できるのか?やっと愛知まで来たものの、ここで足止めも覚悟。でも、Uさんは行けそう!との感覚で、出航準備。風が収まってきたのか、一時的だったのかはわからないが、よし行くぞ!と出航。この日は、最初と最後の15分程度はUさん操船であったが、メインの航行は、私が慣れるためにも私が舵をとった。何度が頭から海水を浴びながらも波を乗り越え、見慣れた三河湾でありながら、非常に懐かしい感覚も感じながら、目的地に無事到着。回航して頂いた、Uさん、Kさん、本当にありがとうございました。そしてマリーナでもやいを取って頂いたマリーナの皆さん、ありがとうございました。